ETLとは?~プロセス処理の内容やETLツール導入のメリットを解説
企業が社内に点在するさまざまなデータを有効活用するためにCDP(プライベートDMP)を導入する際、集めたデータを処理するための「加工」が、思わぬボトルネックになることがよくあります。その際、多種多様なデータを加工・正規化するためのシステム開発・運用工数を削減し、質の高いデータ統合を実現する役割を果たすのが、ETLツールです。そこで今回は、データ統合・CDP(プライベートDMP)の観点から見たETLツールの必要性とメリットと注意点、そしてETLツール選定時の5つのポイントを解説します。
<目次>
■CDPから見たETLの重要性
■ETLとは?
■ETLツールとは? 3つの機能
1|Extract:データを抽出する
2|Transform:データを変換する
3|Load:データファイルを書き出す
■ETLのメリット・導入時の注意点
1|ETLのメリット
2|ETLツール導入時の注意点
■ETLツールの選び方 5つのポイント
1|専門知識の必要度合い
2|GUIの使い心地
3|テクニカルサポートの有無・レベル感
4|SaaSとの連携・拡張性
5|コスト
■まとめ
CDPから見たETLの重要性
企業が社内に点在するデータを有効活用し、経営に役立つインサイトを得るためには、データ統合・CDP(プライベートDMP)の構築が欠かせません。その際には、集めたデータを正しく整える「加工」処理が、非常に重要な工程となります。元データのままでは「同一のデータ」が「異なるデータ」と誤って判定されるなど、さまざまな不具合が生じてしまうためです。
こうした問題に対処するために、CDP(プライベートDMP)でSQL処理を行う際に簡単なデータ加工(スペースやハイフンの除去、正規化など)を実施することがよくあります。しかし、複数のシステム間で大量の、同じ基準によるデータ加工が必要な場合は、CDPにデータ連携する前にデータ加工をして「正規化されたキレイなデータ」としてから統合した方が、CDPを効率よくデータ統合・セグメント処理に専念させることができます。データが正規化されていないと、CDP側の設計時にその都度フォーマットや加工処理を意識しなくてはならず、開発・運用工数増や設計ミスなどにつながってしまうのです。
しかし、多種多様なデータを加工・正規化するのにも、多大な工数がかかります。情報元であるデータソースの種類が多ければ多いほど、加工のためにプログラミングなどの専門的な知識が求められ、膨大な開発・運用工数が必要となります。
その障壁を取り払うための有効な手段が、ETLツールです。
ETLツールを利用することで、データソース毎に求められる高度なエンジニアスキルをツール側で吸収することができます。また、ほとんどのETLツールには加工したい内容を簡単に処理できるインターフェース(GUI)が装備されているため、開発・運用工数を大きく削減できます。
ETLとは?
ETLとは、販売管理システムや顧客管理システムなどさまざまなデータベースやシステムからデータを抽出し、操作しやすいフォーマットに変換してまとめる一連のプロセス(処理)のことです。そのプロセス「Extract(抽出)」「Transform(変換)」「Load(格納)」の頭文字をとって、ETLと呼ばれます。
CDP(プライベートDMP)でデータを活用する置き場には、RAWデータを蓄積するDate Lake(データレイク)、そこから分析や施策で必要なデータを抽出し時系列でまとめるDWH(データウェアハウス)などがあります。ETL(処理)はそれらにおいて加工される前のデータを抽出し、活用しやすいようにデータを変換し、加工先に書き込みを行う役割を担います。
このETLを行うためのシステムは、かつてはスクラッチで開発されていました。今日では、エンタープライズ向けからフリーで使えるオープンソースまで、さまざまなETLツールが存在しています。
ETLツールとは? 3つの機能
それでは3つのプロセスにおいて、ETLツールが具体的に何を行うのかを見ていきましょう。
ETLツールの機能1 Extract:データを抽出する
まず、社内で運用しているさまざまなシステムに保存されているデータを抽出します。ETLツールの多くはDB管理システムから直接データを抽出可能。またCSVやXML、Excelなど形式が異なるデータも抽出可能です。ETLツールの多くは定期的に自動でデータを抽出する機能があり、業務をより効率化できます。また妥当性検証や識別、除外などの処理も実行します。
ETLツールの機能2 Transform:データを変換する
ETLツールはDWH(データウェアハウス)やCDPでのデータ統合を念頭に、抽出したデータのフォーマットや文字コード、属性などを変換・加工します。手作業で行うと膨大な工数がかかりますが、ETLツールの変換機能を使うことで効率的な処理が可能です。さらに、抽出したデータの重複排除やグループ化が可能なツールもあります。
ETLツールの機能3 Load:データファイルを書き出す
変換・加工のプロセスで作成したデータを書き出します。書き出しの形式は、そのデータを扱うシステムやアプリケーションに応じたものになります。
ETLのメリットと注意点
ETLには、以下のメリットがある一方、注意すべきポイントがあります。正しく把握した上で実装することが重要です。差分連携できるデータなのか、一括更新しかできないデータなのか、データの更新方式によっても負荷が変わってきます。そのため、ETLツール導入時には正しい要件整理と、確実な設計が必要となります。
ETLのメリット
· ETLにより、各システムを横断した同一基準でのデータ加工が行え、企業内の個々のデータ形式を効率的に整えることができる。
· ETLプロセス処理開発のために高度な知識を持つエンジニアやプログラマの確保が不要となる。
· 開発工数が削減され、統合したデータの分析や活用などコア業務に集中できる。
ETLツールのデメリット
· プログラミング不要とはいえ、ツールを扱う際には「何のデータに対して、どのような加工をすると適切か」など、ある程度データ処理に関する知識が必要。
· ETLツールの中には、大量データの一括処理に向いていない製品や、そのために追加コストがかかる場合がある。
· ETLツールとしての契約や、製品によってはインストールが必要になるものがあるため、各システムでどのようなデータを保持しているかを踏まえて、必要要否を判断する必要がある。
ETLツールの選び方 5つのポイント
市場にはエンタープライズ向けからフリーで使えるオープンソースまで、さまざまなETLツールが存在します。オープンソースの多くは海外製でサポートもなく、利用は容易ではありません。その一方、有償ツールは機能的には大きな差がなく、「何を基準に選べばよいのだろう」とのお悩みの声をよく耳にします。
以下、ETLツール選定の際に気をつけるべきポイントについて解説します。
ポイント1:専門知識の必要度合い
「ETLツールは専門知識が不要」と言われますが、中にはSQLやデータベースなど、一定の知識を有することが前提となるツールも存在します。「連携先テンプレートの有無」「接続コネクタの種類・数」も含めて、可能な限り誰にでも扱えて、業務の属人化を防ぐことができるETLツールを選びましょう。
ポイント2:GUIの使い心地
「直感的なGUI上でワークフロー作成可能」が売りのETLツールですが、その使いやすさには製品によって差があります。また、海外製品では日本語化されていないものもあります。ほとんどのELTツールは導入前に無料トライアルが行えますので、実際に触ってみて、操作のしやすさを確認しましょう。
ポイント3:テクニカルサポートの有無・レベル感
海外産、国産のツールが混在するETLツールは、サポート体制も提供各社により差があります。こちらも導入前のトライアル期間中に、サポートの対応品質やレスポンスのスピードなどを確認しましょう。
ポイント4:SaaSとの連携・拡張性
クラウドシフトが進む中、SaaSなどクラウドサービスとの連携性は非常に重要です。自社利用中のサービスだけでなく今後活用予定のものも含めて、標準装備のコネクタがどのくらいあるか、また今後拡張する計画があるかも確認しましょう。
ポイント5:コスト
最後はもちろん利用コストです。ETLツールには買い切り型と月額課金型があり、近年ではサブスクリプション(月額課金型)が主流となって来ています。さらにデータ転送量、稼働時間、アダプタ使用量など従量制で月額料金が変わり、その変動要素もツールにより異なりますので、自社のデータ量や転送ボリュームなど状況に合わせて選択しましょう。もちろんCDP構築やDWH、BIツールなど全体予算との兼ね合いも重要です。
まとめ
いかがでしょうか。今回はデータ統合・CDPの観点から、ETLツールの必要性とメリット・デメリット、ETLツール選定時のポイントについて解説しました。重要なポイントは、ETLは情報活用のためのプロセス・ツールの一つであり、ETLツールの導入が目的ではないということです。ELTツールを導入する際には、自社のデータ管理の体制と業務など現状を把握し、今後のデータ分析で実現したい真の目的をしっかり整理した上で、検討する必要があります。
TOPPANはお客様が保持するデータ内容や要件を踏まえ、CDP導入を含めたETLツールの要否および、ETLツールの選定・導入・運用を支援します。ぜひお気軽に、お問い合わせください。
2023.06.01