データテクノロジー&プラットフォームサービス コラム

AIカメラとは~小売り店舗での行動分析に基づくマーケティング活用方法 ・事例

リテール・小売業界では数年前から消費者の購買行動が店舗からECへと流れてしまう「店舗のショールーミング化」が話題になりました。新型コロナウイルス感染拡大でECの利用がさらに増加する中で、小売り店舗には今、高度な顧客の行動分析に裏打ちされた、よりパーソナライズされた接客が求められるようになっています。

リテールや小売店舗に設置するカメラといえば、防犯や監視目的のイメージを思い浮かべる人が多いと思いでしょう。しかし今、AIカメラと言われるAI(人工知能)を搭載したカメラがさまざまな業種で利用され、目覚ましい進化を遂げています。そして、進化したAIカメラを活用することで、商業施設やリアル店舗で顧客行動データに基づいたさまざまな改善効果が得られます。

そこで今回は、スーパーやショッピングモール、アパレル、雑貨などさまざまなリテール・小売店舗におけるマーケティング強化、カスタマイズされた接客による売り上げ向上が課題と感じている方を対象に、 なぜリアル店舗にAIカメラが必要なのか、どんな分析が可能で、どのような店頭施策が実現するのかを、活用方法・事例も交えて分かりやすく解説します。

AIカメラを活用し店内の顧客行動を可視化・分析
~データドリブンなインストアマーケティングを支援~


<目次>
■実店舗でのきめ細かな顧客行動分析が求められる背景
■AIカメラとは?通常の監視カメラと何が違う?
■AIカメラが店舗で把握・分析できることは?
■AIカメラによる店舗分析に基づくマーケティング活用方法 ・事例 10選
1 | 来店者の属性分析によるマーケティング施策や品揃えの検討
2 | 購買分析
3 | 動線分析による店舗レイアウトの最適化
4 | 店員の接客を支援し、接客品質を向上
5 | 棚前立止まり分析による効果的な棚割の実現
6 | 商品接触分析を商品開発にフィードバック
7 | サイネージ広告連携で売上向上
8 | 空席検知による理想的な店舗運営設計
9 | 不審者やカスタマーハラスメント検知によるトラブル防止
10 | マスク着用・密状況チェックなど感染症対策のデジタル化
■簡単導入!店舗におけるAIカメラ活用を支援するサービス


■実店舗でのきめ細かな顧客行動分析が求められる背景

新型コロナウイルス感染症拡大対策として外出自粛の呼びかけおよびECの利用が推奨された結果、2020年の日本国内の物販系分野でのBtoC-EC(消費者向け電子商取引)の市場規模は、前年比21.71%増の12兆2,333億円。旅行業界の落ち込みによりEC市場全体としては横ばいではあるものの、物販系ではほぼすべてのジャンルでEC売上が増加。EC化率*1は前年比1.32ポイント増の8.08%となり、さらに大幅に市場規模が拡大しています。

*1 EC化率-すべての商取引金額(商取引市場規模)に対する、電子商取引市場規模の割合

<物販系分野 BtoC-EC市場およびEC化率*1の推移(市場規模の単位:億円)>
出典:令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)


EC市場が急速に拡大した理由は、スマホ(スマートフォン)が普及したことだけではありません。インターネット、ECサイトでは行動履歴分析を基にした「接客のカスタマイゼーション」が各段に進化しています。

ECサイト内では、誰が・どこで・何を・どれくらい閲覧し、その結果どのような商品を、どのタイミングや価格で購入したのか、といった情報が(個人情報を特定しない範囲で)取得できます。これらの情報はECサイト改善に積極的に活用され、利用者ごとに「最適化された」レコメンド情報と商品・サービスの提供がなされ、その結果、消費者のショッピングにおける利便性は大幅に向上しています。

もちろん、「商品を実際に手に取れる」「店舗の雰囲気を含めてショッピングを楽しむ」など実店舗の方が勝る点も多いのですが、店舗で収集できる情報には限りがあり、ECサイトのように顧客ごとに最適化された情報提供を行うことは困難です。

この差がEC市場を急拡大させ、実店舗におけるショールーミング化が進む要因と考えられるのです。

加えて、流通・小売業を取り巻く環境では、労働人口減少に伴う人手不足、従業員の働き方改革や生産性の向上、不正や盗難の防止、適正な在庫・商品補充のタイミング最適化など、さまざまな課題があります。

リテール・小売企業がこうした状況を覆し、顧客を店舗に呼び戻すには、AIなどのテクノロジーを活用したオペレーションの改善と、利用者ごとに最適化された情報およびサービスの提供、すなわち「販促のパーソナライズ化」が欠かせません。

そのために今、これまで以上に店舗におけるデータの取得と、それに基づく顧客行動分析の進化が求められており、その実現手段としてAIカメラに注目が高まっているのです。


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■AIカメラとは?通常の監視カメラと何が違う?

AIカメラとは、その名の通り「AI(人工知能)を活用するカメラ」のことです。一口にAIカメラと言ってもさまざまなメーカーから、多彩な種類が発売されています。AIカメラとは一般的に、映像を記録するだけの通常のカメラとは異なり、

・AIが搭載されていることで人物の一致・不一致、性別や年齢層の推定 などが可能
・さらに繰り返し学習することで情報の精度を高めていくことができる

などの特長を持ちます。また、必ずしも新規にカメラごと導入する必要はなく、従来の防犯カメラにAIを搭載したハードウェアデバイスを接続することでAIカメラとしての機能を追加できる、ソリューションサービスもあります。

AI(Artificial Intelligence:人工知能)とは、人間が脳内で行う知的ふるまいの一部を、ソフトウェアを用いて人工的に再現したもの。自ら学び学習しながら精度を高めるML(Machine Learning:機械学習)によりパターンや特徴を発見し、人間には不可能な膨大な計算やデータ処理を瞬時に行えます。

これまでAIカメラは、顔認証や車番認識、ヒト・モノ行動認識などの機能により監視、防犯目的として使われて進化を続けてきました。現在は販促、マーケティング視点での活用に注目が集まっています。

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■AIカメラが店舗で把握できること・分析できることは?

それでは、AIカメラが店舗での顧客行動分析に、具体的にどう活用できるのかを見ていきましょう。「AIカメラができること:導入することで何がわかるのか?」を知ると、活用アイデアが思い描きやすいと思います。

前述の通り、さまざまなメーカーから多彩な種類のAIカメラが発売されており、機種により店舗で把握できる・分析できること、できないことはさまざまですが、活用事例として以下が挙げられます。

〇来店者数(立ち寄り時間)カウント
・店舗や売り場に立ち寄った顧客の数をカウント。
・立ち寄り時間も計測できます。

〇性別・年代別分析
・来店者の性別・年代・滞留時間をリアルタイムに分析。

〇導線分析
・入店から退店までの来店者の動線を分析し、線画として可視化。

〇棚前立ち止まり分析
・商品棚ごとの来店客の立ち止まり時間と人数をカウント。
・商品棚ごとの集客状況、関心度合いを可視化できます。

〇商品接触分析
・来店客がどの商品に触れたかを分析。
・ブランドや形状ごとの関心度合いや、手にしたものの購入につながらなかった商品、比較検討の様子などが把握できます。

このほかにも、AIカメラは

〇店頭ディスプレイ閲覧者数→入店した顧客数(広告ごとの集客効果)
〇時間帯と場所別の店舗内混雑状況
〇不審者の 検知とアラート通知
〇マスク着用状況・混雑状況の推定

なども把握・分析可能です。

さらに、AIカメラで収集した情報とPOSシステムとを連携させれば「いつ・どこで・誰が・何を買ったか?」などが把握でき、店舗分析の幅と深さが一気に広がります。

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■AIカメラによる店舗分析に基づくマーケティング活用方法 ・事例 10選

AIカメラで取得できるデータがわかったところで、活用方法・事例を見ていきましょう。「データを取得したものの、どう活用したらよいかわからない」という方は、ヒントにしてください。

1 | 来店者の属性分析によるマーケティング施策や品揃えの検討

AIカメラで店舗における来店者の性別、年代、滞留時間をリアルタイムに分析し、ダッシュボードに表示したり、店舗側のシステムと連携したりして表示します。これにより、店舗ごとの来店者の属性把握、広告と来店数の相関などを分析し、マーケティング施策のPDCAを回すことができ、店舗ごとの品揃えの検討に役立ちます。

2 | 購買分析

AIカメラがあれば、店舗で会員証やポイントカードの提示がない場合でも、カメラのタイムスタンプとPOSのタイムスタンプを突合することで、来店客の購入状況を把握して可視化することができます。会員証やポイントカードの提示率が低い場合や、夫婦や家族での購入、代理購入などの場合でも、正確な購買分析が可能です。

3 | 動線分析による店舗レイアウトの最適化

AIカメラは対象売場の立ち寄り者数を時系列で分析して、可視化することができます。複数のカメラを横断して来店者の導線をトラッキングすることも可能です。複数のカメラを横断してトラッキングすれば、来店者ごとに一筆書きで把握することもできます 。これにより、的確な動線の設計になっているか、複数店舗での動線比較、また来店者属性ごとの動線の比較が可能となり、最適な店舗レイアウトを実現することができます。

4 | 店員の接客を支援し、接客品質を向上

AIカメラで店内状況をモニタリングし、お困りの様子のお客様を把握し、リアルタイムに店員に通知することで顧客満足度の向上や、適切なタイミングでの接客の実現による売上向上が可能です。

5 | 棚前立止まり分析による効果的な棚割の実現

AIカメラが商品棚ごとの来店客の立ち止まり時間、人数をカウントし、商品棚への集客状況、関心の度合いを可視化。来店客の属性も取得しているため、性別、年齢ごとの商品棚への集客、関心度合いの把握と分析が可能です。これにより、店舗において効果的な棚割を実現することができます。

6 | 商品接触分析を商品開発にフィードバック

AIカメラに商品棚情報を登録、骨格検出 技術と組み合わせることで、来店客がどの商品に触れたかを分析して、可視化。これにより、メーカーブランド商品とプライベートブランドへの関心度合いの違いを把握したり、商品を手に取ったものの、購入につながらなかった商品が何かなどを特定したりすることも可能。取得した行動分析結果をメーカーや開発部門にフィードバックすれば、商品開発のブラッシュアップが行えます。

7 | サイネージ広告連携で売上向上

AIカメラで来店者の年齢、性別を把握し、判別した来店者情報を元にサイネージに表示すべきクリエイティブを判断し、リアルタイムに配信します。来店者に有意義な情報を的確に表示することで、満足度の向上と、売上アップを支援します。

8 | 空席検知による理想的な店舗運営設計

AIカメラをカフェやレストラン、ホテルなどで活用すれば、店内の混雑状況や、空席状況の検出と可視化 が可能です。想定通りに店舗が使われているかどうか、人気のないテーブルがないか、レイアウトが最適かなどを分析し、快適で効率の良い理想的な店舗作りが行えます。

9 | 不審者やカスタマーハラスメント検知によるトラブル防止

防犯カメラをAI化することで、防犯に加えてカスタマーハラスメントの防止にも活用が可能です。滞在時間で迷惑客や不審者をAIカメラで検出、スタッフや本部にアラート通知することにより、お店と従業員の安心、安全を確保。従業員の職場定着にもつながります。

10 | マスク着用・密状況チェックなど感染症対策のデジタル化

AIカメラで来店客のマスク着用状況や店内の密状況をチェックすることで、人手による感染症対策業務の負荷を軽減すると共に、スタッフの感染リスク低減にもつながります。取得したデータを公開することで、来店客に安心をアピールする効果もあります。

■簡単導入!店舗におけるAIカメラ活用を支援するサービス

TOPPANでは、これまでにご紹介したさまざまなAIカメラの店舗活用により、可視化と分析、データドリブンなインストアマーケティングの実行を支援するサービスを提供しています。

・既設の防犯カメラをそのまま活用することも可能 *
・AIエッジデバイス「AWLBOX」を簡単設置
・多様なAIアプリケーションから必要機能を選択
・分析結果を個人情報は残さず、クラウドで保持

などの特長を持ち、設備工事・機材保守もワンストップでサポート。既設のカメラをAIカメラとして活用できることでお手頃な価格で利用でき、導入負荷も高くありません。

さらにTOPPANは、AIカメラに加え豊富なデジタルマーケティング支援実績を基に、BI(ダッシュボード)への可視化やさまざまなデータとの統合・管理など立ち上げから運用までを含め、店舗運営企業の皆様に対し、データを活用した効果的なデジタルマーケティング施策の実施をトータルで支援します。

ぜひ、お気軽にお問い合わせください!

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【参考資料】

2023.11.30

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