コラム

脱プラスチックに貢献するエコパッケージの実力とは?

あらゆるビジネスやプロダクト開発において、サステナビリティはいまや欠かせない指標となりました。パッケージについても「エコ(環境配慮型)パッケージ」や「サステナブルパッケージ」と呼ばれる、環境への負荷を抑えた製品が注目されています。

このコラムでは、環境に配慮したエコパッケージやサステナブルパッケージについての基礎知識を整理し、新たなビジネスの可能性について考えます。


ーそもそも「エコ(環境配慮型)パッケージ」とは

そもそも「エコ(環境配慮型)パッケージ」とはどのようなパッケージを意味するのでしょうか。エコがつくので、なんとなく環境に優しいパッケージというイメージはつくかもしれませんが、具体的に「エコ(環境配慮型)パッケージ」とはどのようなものかを答えられる人は少ないかもしれません。

では「エコ(環境配慮型)パッケージ」とはどのようなものかというと、パッケージとしての機能はこれまで利用してきたものと変わらずに、その上で、リデュース、リユース、リサイクルを考慮したものをいいます。

リデュースとは、廃棄されるものの量をへらすことを意味します。例えばTOPPANでは従来のパッケージの機能を維持・改善しながら、原材料の削減や環境負荷低減を実現するエコパッケージの開発を進めています。

リユースは、使用後にそのまま再度利用ができることをいいます。

リサイクルは、再資源化し利用することをいいます。TOPPANでは、リサイクルが容易なパッケージの開発を行っています。

この他、最近ではプラスチックの代替素材に紙を利用するなども「エコパッケージ」の一つとして注目を集めています。


ー エコ(環境配慮型)パッケージが注目される理由とは?

さまざまな形に加工できるプラスチックは、軽量で表現豊かなパッケージの素材として多く使われてきました。

しかしそうした利便性の一方で、適切に処理されない「プラごみ」は自然分解されにくく半永久的に残り続けることから、地球環境に大きな負荷を与えています。今日においては特に石油資源の枯渇問題との関連や、「マイクロプラスチック」による海洋・大気汚染問題が指摘されています。

このような背景から、プラスチックの消費を抑える「減プラスチック」「脱プラスチック」は世界的な課題に。さらに製造時や輸送時に発生するCO2を中心とした温室効果ガスの排出量削減など、環境への負荷を抑制するための取り組みが、あらゆるビジネスとプロダクト開発に求められるようになりました。

こうした課題への取り組みとして、パッケージにおいては地球環境への負荷を抑えた「エコ(環境配慮型)パッケージ」や「サステナブルパッケージ」が注目され、採用が進んでいます。

エコパッケージが環境への負荷を下げられるのはなぜ?

「エコ(環境配慮型)パッケージ」あるいは「サステナブルパッケージ」は、なぜ環境への負荷を抑え、サステナビリティに貢献することができるのでしょうか。

ここでは資材の調達からリサイクル・廃棄までの流れ(ライフサイクル)に沿ってご紹介します。

1.調達:
石油資源の消費を削減できる再生材や、森林資源のサステナブルな利用に配慮した紙など、資材の選択によって、環境への負荷を低減できます。
• 適正調達した紙:間伐材を含む国産材や、森林認証紙
• 再生材:リサイクルされた材料
• 紙:材料の一部または全体に紙を使用し、プラスチック使用量を削減
• バイオマスプラスチック:植物を原料とし、石油使用量を削減

2.設計・製造:
強度や機能性を確保しながら、製造時のCO2排出量を削減するなど、製品のライフサイクル全体での環境負荷を低減する設計が可能です。
• リデュース:従来の機能を維持・改善しながら、原材料を削減
• 製造方法の最適化:環境負荷の低い製造方法、印刷方法の採用

3.使用:
たとえば食品用パッケージでは、使いやすさを確保しながら、調理時のCO2排出量削減に貢献。食品ロスの削減にも寄与することができます。
• 電子レンジ対応:加熱時のエネルギー消費を削減
• 食品ロスの削減:パッケージ内側に残る内容物の削減、再封機能

4.リサイクル・廃棄:
パッケージのリサイクルがしやすくなり、さらにリサイクルスキームを構築することで循環型社会の実現に貢献できます。
• 単一素材化:モノマテリアル包材の使用でリサイクル性を向上
• 紙容器:リサイクルが可能な「紙+バリアフィルム」の容器採用など

プラスチック使用量の削減が重要な理由とは?

サステナビリティに貢献するエコパッケージ開発において、最初に取り組むべき課題の一つが「資材の選択」です。

プラスチックの使用は、石油資源の枯渇、あるいは「プラごみ」の増加、マイクロプラスチックによる環境汚染など、さまざまなかたちで環境への負荷を高めています。そしてもちろん、自然環境への負荷は社会と、そこに生きるすべての人の身体にも影響するものです。

すべてのプラスチック素材を置換することが難しい場合も、紙との複合素材とすることで全体のプラスチック使用量の大幅な削減が可能です。その場合も、加工により耐油性・耐水性を確保し、食品や化粧品などのパッケージに使用することができます。

「エコ」の評価は世界基準に

パッケージの基本的な役割は、もはや内容物を保護することだけではありません。使いやすさや機能性を持ちながら、サステナビリティや環境保全に貢献することも必須だといえるでしょう。

では、実際にそのパッケージが「エコ(環境負荷が低い)」なのかを客観的に評価することはできるのでしょうか。

そうした評価に用いられるのが、LCA(Life Cycle Assessment ライフサイクルアセスメント)と呼ばれる手法です。

LCAは、原材料(資源採取から原材料製造)から、製品の製造・使用・リサイクル・廃棄など、製品のライフサイクル全体について、使用する資源や排出する環境負荷を定量的に評価するものです。ISO(国際標準化機構)による環境マネジメントに関する国際規格の中でISO規格が定められていることから、世界基準の評価方法といえます。


ー エコ(環境配慮型)パッケージのメリットと可能性

あらゆるプロダクトに欠かせないパッケージですが、「エコ(環境配慮型)パッケージ」が注目されているもう一つの理由には、その影響力、あるいは可能性の大きさが挙げられるでしょう。

エコパッケージはブランド価値を高め、メッ セージを発信する

素材としてのプラスチック使用量の削減や、製造時のCO2排出量削減といった方法で環境への負荷を抑えたサステナブルなエコパッケージの価値は、それ自体が環境保全に貢献することだけに留まりません。

「エコ(環境配慮型)パッケージ」の採用は、環境保全やサステナビリティに対する具体的なアクションです。一つひとつのパッケージは、企業としての姿勢を表現し、小売店でのディスプレイによるブランド訴求、メーカーや商品に対する消費者からの評価を高めるメッセージ力を持った媒体でもあるのです。

エコパッケージでも重要なユーザビリティやデザインとの両立

サステナブルなパッケージであっても、ユーザビリティやデザイン性を無視することはできません。消費者にとっては、それらも「使い続ける」条件だからです。

プラスチックの使用量削減、あるいはCO2排出量の削減などにより環境への負荷を抑えながらも、デザインの自由度と可能性を制限しない素材・製造方法は、「エコ(環境配慮型)パッケージ」の可能性を広げます。特に、素材の手触りに温もりややさしさを感じさせる紙素材、紙とプラスチックの混合素材は、プロダクト開発の付加価値を高めるパッケージとして採用が進んでいます。


ー エコ(環境配慮型)パッケージの事例

すでに多くの「エコ(環境配慮型)パッケージ」や「サステナブルパッケージ」が流通していますが、ここでは、TOPPANがご提案するプラスチック代替素材「MAPKA®」と、ポンプが使える紙製ボトル「キューブパック」について、その特徴をご紹介します。

いずれもプラスチック使用量を削減しながら強度を確保でき、プラスチック容器からの切り替えパッケージとして開発が可能です。

MAPKA®(マプカ):紙パウダーを51%含有。強度に優れ、プラスチック使用量を削減

紙パウダーを主原料にした、世界でただ一つの新素材です※。高耐性・耐熱性を併せ持ち、プラスチックの代替素材として使用できます。プラスチック使用量の削減につながることはもちろん、紙パウダーを51%含んでいることから、製品にバイオマスマークの付与が可能で、可燃ごみとして処理できます。製造時はシート成形・射出成形加工ができ、これまでのプラスチックと比較して成形温度が低いため、成形にかかるエネルギー消費量が削減できます。

※紙パウダーを主原料にポリオレフィン系樹脂を混合させてペレット化したものとして。
※「MAPKA®(マプカ)」は、株式会社環境経営総合研究所の商標です。

キューブパック:水まわりでも使用可能な耐水性を備え、ポンプも使える紙製ボトル

一般的な同容量のプラスチックボトルと比較して、プラスチック使用量を55%削減。代替素材として紙を採用しています。耐水性・耐油性を持たせることでシャンプーや化粧品をはじめ、さまざまな用途に利用できます。これまでボトルを再利用していた「詰め替え」ボトルとは異なり、空になった容器からポンプを取り外して「付け替え」て使用するため、衛生面でも優れています。製造時には容器の天面、底面への印刷も可能で、パッケージのデザイン性にもこだわることができます。

TOPPANでは、幅広いラインナップで脱プラスチックに貢献し、機能性とオリジナリティ、デザイン性、使い勝手に優れた包材・パッケージ開発を支援しています。

詳細は、以下または各関連サービスページをご参照ください。

2023.11.21