店舗集客

“イマーシブ体験”が
   商業施設イベントを変える
~集客を成功させる新しい選択肢とは~

かつての商業施設イベントは、物販や試食などの「モノ」を中心に設計されていました。しかし、消費者の価値観が「所有」から「体験」「共鳴」「一体感」といった“トキ”の消費へと移り変わる中で、今、商業施設にも新しい形の「体験価値」が求められています。
特に注目されているのが、五感を刺激し、その場に没入できる次世代型イベント「イマーシブ体験」です。

本記事では、商業施設における体験価値の変化を踏まえながら、「学び×体験」など、実際のイマーシブイベント事例を紹介します。


商業施設イベントに求められる「体験価値」の変化

来場者の心を動かし、再来場を促すには、イベントにどのような価値を持たせるかが重要です。今求められる「体験価値」とは何か、詳しく解説します。

“イマーシブ体験”が商業施設イベントを変える|TOPPAN

「モノ」から「コト」、そして「トキ」消費へ

近年、消費者の価値観は大きく変化しています。高度経済成長期には「モノを所有すること」に喜びがありましたが、モノが行き渡るにつれ、旅行やグルメといった「コト=体験」への欲求が高まりました。こうした変化の背景には、生活水準の向上だけではなく、ブランド品やサービスが身近になったこと、SNSで体験を共有する文化の浸透などが挙げられます。

しかし近年では、「コト消費」ですら満たされにくくなってきました。その理由のひとつは、SNSの普及により他人の体験が“疑似的に”体験できるようになったからです。誰かの旅行写真や食事写真を見て満足できてしまうため、自ら出かけて体験しようという動機が弱まっているのです。さらに、SNS等で他者が充実した体験をしている様子を見ることに対する疲弊「SNS疲れ」や、ありふれた体験に対する既視感も、「コト消費」の魅力を相対的に薄める要因となっています。

こうした背景のもと注目されているのが、「トキ消費」と呼ばれる新しい価値観です。これは「今この瞬間にしか体験できない」「同じ時間・空間を他者と共有できる」といった一過性の体験にこそ価値を見出す消費スタイルです。

この「トキ消費」には、3つの明確な特徴があります。

非再現性:同じ瞬間は二度と体験できないという希少性
参加性:自分が主体となって場を楽しむ能動性
貢献性:他の参加者との一体感や、イベント全体への貢献感

いずれも「自分がその場にいた」ことそのものが価値になり、所有でも体験でもない「共鳴」や「没入」の喜びが重視されているのです。

こうした価値観の変化は、商業施設などのイベント設計にも影響を与えています。単にモノを売るだけではなく、その場でしか味わえない感動、共感、没入体験を創出することが、これからのイベントに求められる「体験価値」です。

「また来たい」と思わせるイベントをつくるには、商品やサービスだけではなく、そのとき、その場でしか味わえない“トキ”をどう提供するかが鍵となるでしょう。

集客課題に直面する商業施設

物産展や展示販売といった“定番イベント”だけでは、集客に限界を感じる商業施設が増えてきました。特にコロナ禍を経た今、来館者の数が思うように戻らず、「新しい人をどう呼び込むか」「何度でも来たくなる理由をどうつくるか」が大きな課題になっています。

これまで、一定のファン層に向けた催事を行うことでリ ピーターを育ててきた施設も、今はもっと幅広い層に向けて次の来館動機を打ち出していく必要があります。

また最近では、空きスペースや建物のエントランス部分を活用して、集客ができないかと検討する施設も増えてきています。エントランス空間や吹き抜けのような広い空間も、話題性のあるイベントの会場として再注目されています。施設全体をひとつの舞台装置のようにして、「最初の一歩でワクワクさせられるか」が、集客において重要です。

イベントそのものだけではなく、その場の「過ごし方」や「思い出に残る演出」をどう仕掛けるかが、これからの商業施設にますます求められるでしょう。

イマーシブ体験とは?五感を刺激する次世代型イベント

「イマーシブ体験」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。その特徴や文化との相性、導入メリットを見ていきましょう。

“イマーシブ体験”が商業施設イベントを変える|TOPPAN
Planning and Production: TOPPAN Inc.
Cooperation: Cool Art Tokyo (Asai Collection)

イマーシブ=“没入型”の新体験

イマーシブイベントとは、デジタル技術や五感を刺激する仕掛けを駆使し、来場者自身が「その世界に入り込んでいるかのような感覚」を得られる体験型コンテンツです。単に見たり聞いたりするだけではなく、五感を通じて空間全体を味わうことができる点が最大の魅力です。

こうした没入感は、単なるイベントとは一線を画し、「また来たい」「誰かに話したい」と思わせる強い記憶を残します。その結果、SNSでの発信にもつながり、話題性や拡散性の高いコンテンツとしても注目されています。

文化・芸術との親和性が高い

イマーシブ体験は、文化や芸術分野との相性も非常に良好です。たとえば浮世絵や日本画、歴史的建造物などをテーマにした展示に没入型演出を組み合わせることで、従来の「見るだけの展示」から、「作品世界に没入できる展示」へと進化させることができます。

さらに、視覚的・聴覚的な演出を通じて、作品の背景にある時代や思想を体感できる構成は、学びながら楽しめる“知的エンタメ”としての価値を高めます。“体験型の学び”を提供できるイベントとして、学校・地域・行政との連携の可能性も広がります。

また、作品保存の観点から、作品に負担をかけずに展示できるという点もメリットです。

“文化”をテーマにする優位性

アニメやゲームのIPコンテンツと異なり、絵画、建築物、伝統芸能、祭事といった文化財は教育的・公的イベントとも親和性があり、安心して企画に取り入れられる素材です。

文化財を活用したイマーシブイベントは、「知的好奇心」と「感動体験」を両立できる点でも優れています。たとえば浮世絵を題材にしたイベントであれば、視覚的インパクトだけではなく、風景に描かれた時代背景や江戸庶民の暮らし、神仏や自然現象・妖怪などの描写の背景にある当時の思想や世界観に触れる機会を提供でき、学びの要素を自然に取り込むことが可能です。

各施設でのイマーシブイベント事例

イマーシブ体験が注目を集める中、実際に各施設でどのようなイベントが行われているのか気になる方も多いのではないでしょうか。ここでは、ファミリー層を対象とした“学び×体験”型のイベントと、インバウンド需要に対応した“浮世絵×イマーシブ”体験の企画の事例を紹介します。

ファミリー層を惹きつける“学び×体験”イベント

TNM & TOPPAN ミュージアムシアターでは、ファミリー層を対象とした“学び×体験”型のイマーシブイベントとして、2018年夏に「【夏休み自由研究応援!】見て、知って、折って、VRトークイベント&親子折り紙教室」を開催しました。

本イベントは、朝日出版社から刊行された書籍『折る土偶ちゃん』とのコラボレーションにより実現したもので、土偶という日本の歴史的モチーフをテーマに、親子で楽しめる構成が特徴です。

“イマーシブ体験”が商業施設イベントを変える|TOPPAN
イベントの様子:譽田亜紀子さんによる解説

著者である譽田亜希子氏によるトークセッションでは、土偶の成り立ちや魅力をVR映像を交えて紹介。映像によって立体的かつ臨場感のある土偶の世界が再現され、来場者は知的好奇心をくすぐられる没入体験を楽しみました。

その後、デザインユニットCOCHAEの武田美貴氏による折り紙ワークショップが行われ、参加者は実際に土偶の折り紙づくりに挑戦。視覚的な理解から実技体験へと展開する流れが、親子の学びとふれあいを自然に促進する内容となっていました。

さらに、当日限定で会場前には自由参加型の折り紙コーナーも設置され、通りすがりの来館者も気軽に体験できる工夫が施されていました。

このようなイベントは、歴史・文化をテーマにしながらもVR技術や体験型コンテンツを掛け合わせることで、子どもから大人まで幅広い層の関心を集め、集客力と教育的価値の両立を実現した好例といえます。

インバウンド集客に有効な“浮世絵×イマーシブ体験”

インバウンド需要の高まりを受け、日本の伝統文化を体感型で発信する取り組みとして注目されているのが、浮世絵と没入型体験を融合させた「DIVE IN UKIYO-E!®」です。本企画では、世界的にも関心の高い浮世絵をテーマに、デジタルフォトスポットや巨大ビジョンを用いた空間演出によって、訪日外国人を惹きつける新たな“イマーシブ”体験が提供されています。

“イマーシブ体験”が商業施設イベントを変える|TOPPAN
Planning and Production: TOPPAN Inc.
Cooperation: Cool Art Tokyo (Asai Collection)

特筆すべきは、約3万点を所蔵する日本有数の個人浮世絵コレクション「浅井コレクション」との連携です。2021年には、中国・北京や上海などの美術館で開催された展覧会で、合計32万人を動員するなど、海外でもその高い集客力を実証済みです。

幕末〜明治期の貴重な浮世絵を中心に構成された本コンテンツは、ヒーロー・妖怪・美女・歌舞伎・風景・祭りといった多彩なテーマ設定が可能で、施設のターゲット層や展示目的に応じて柔軟な演出が行えます。現場では、妖怪が迫ってくるような大迫力の映像演出や、浮世絵の世界に入り込む感覚を味わえるイマーシブ要素が展開され、来場者の五感を刺激します。

また、会場にはSNS映えするフォトスポットが多数設置され、参加者同士の交流や思い出の共有も自然に生まれる設計になっています。異文化体験を楽しみながら、その魅力を自発的に発信してもらえることも、インバウンド施策としての大きな強みです。

まとめ|商業施設の集客に“文化×没入体験”を

商業施設における新しい集客手法として、イマーシブ体験イベントは高い効果を発揮します。
TOPPANでは、多くの文化事業に関わり築いてきた文化財ホルダーとの連携・映像表現に関する多様な技術力を掛け合わせ、文化に特化した没入体験型イベントの企画・制作から運営までをワンストップでご提供しております。
国宝や著名な浮世絵コレクション等を活用し、貴社のイベント開催目的やターゲットに適したイマーシブ文化イベントをご提案いたします。
イベントアイデアにお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

“イマーシブ体験”が商業施設イベントを変える|TOPPAN

2025.08.25

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