医療・介護の「働き方」の課題を、
DX活用で支援
株式会社メディヴァ様では、医療・介護現場向けの業務改善・生産性向上コンサルティングを実施し、DXなどを取り入れながら課題解決を支援しています。医療・介護現場の抱える課題とDXの必要性、業務改善・生産性向上コンサルティングの概要やTOPPANとの関わりなどについて、中澤様、小川様にお話を伺いました。
株式会社メディヴァ コンサルティング事業部 中澤 亜希 様 株式会社メディヴァ コンサルティング事業部 小川 健太 様 |
業務改善の課題を、アプリで見える化
――メディヴァ様では、主に医療機関と介護施設を対象に、業務改善・生産性向上コンサルティングを行っていらっしゃいます。医療・介護現場の課題について教えてください。
中澤:医療・介護職は改めて言うまでもなく、人の健康・命に関わる重要な仕事ですが、採用難や高い離職水準の影響で人手不足となり、現場は厳しさを増しています。超高齢社会となり、医療の必要度が高い方や合併症をお持ちの方、認知症の方など、より丁寧な対応が必要な患者さんも増えています。その一方で、医師やコメディカルの働き方改革推進により労働時間の削減も求められています。そのような状況の中、現場で働くスタッフが疲弊して退職者が増え、人手不足がさらに進んでしまう悪循環に陥っている病院・施設は少なくありません。
また、多くの地域で人口減少による働き手不足と将来の患者・利用者の減少が見込まれる中、診療報酬・介護報酬の改定に対応するための新たな取り組みの実施、それに伴う新しいシステム導入のためのコスト増への対策が必要となっています。これらの影響を受け、経営危機に直面する施設も増えてきており、今後もその傾向は加速していくと思われます。
小川:私は前職が理学療法士で、最近まで臨床に関わっていました。医療・介護従事者の視点から言うと、スタッフは限られた時間の中で患者さんと直接関わる時間を一番大切にしたいと考えます。しかし、現実にはそれが思うようにできず、もどかしさを感じている方もいると思われます。患者さんとの時間を長く確保できても、結果的に残業時間が増加し、上長から早く帰るように指示され、板挟みにあってしまうこともあります。こういった状況から、患者さんに直接関わる時間が取れなくなり、スタッフの業務意欲の低下、退職者の増加・人手不足につながり、さらに患者さんとの時間を大切にできなくなるという悪循環に陥るケースも少なくありません。
また、さまざまな年齢層の方が働く医療・介護業界では、業務改善を行おうとしてもパソコンの使用経験がない方もいらっしゃいますので、デジタルツールを1つ導入するにも時間がかかるといった業界の特性があると感じています。
――業務改善・生産性向上コンサルティングでは、業務量調査のため独自アプリ「MIERU」を開発し、使用されています。こちらを含めて、業務改善・生産性向上コンサルティングの概要をお聞かせください。
小川:業務改善・生産性向上コンサルティングでは、業務量の見える化を図るために、はじめに病院・介護施設のスタッフの方々に「MIERU」をインストールしたスマートフォンを持って数日間過ごしていただきます。各業務開始時に業務名を選んでタップし、業務が終了したら「STOP」ボタンをタップ。こうした簡単な操作だけで、各業務にかかった時間を収集できます。
得られたデータをもとに、どの業務にどれだけ時間がかかっているかを集計し、グラフにして可視化します。その際、患者さんに直接関わっている時間と、記録などの間接的な業務時間の割合などとの比較や、一般的な医療機関・介護施設と比べてどうなのかを明示していくと、スタッフの皆さんはどんな無駄があるのかを把握でき、業務改善の必要性に納得されます。
次に、具体的な業務改善策を提示していきます。間接的な業務をいかに効率化し、直接的な業務の質を上げていくかがポイントになります。たとえば、清掃業務は専門職でなくてもできるので、有資格者以外にタスクシフトするという選択肢もあります。他にも、ICTを活用して紙ベースの記録や書類をデジタル化するなど、業務の手順を少し工夫するだけで効率化できる例もあります。
弊社の場合、こうした業務改善のご提案だけでなく実行支援まで行っています。実行支援の際には現場のスタッフの理解や納得感を得ることが重要で、「MIERU」での計測やそこから得られたデータはそのような目的にも活用しています。さらに改善後には、もう一度「MIERU」を使ってどの業務がどれくらい効率化されたか再検証することもあります。
中澤:介護施設の業務改善の一例としては、夜間の見回りにかかっていた時間を削減できたケースがあります。介護施設の中には、夜間は1時間ごとに居室を見回るケースがあります。このような施設にベッドセンサーやカメラなどを導入することで、夜間の見回りに必要な時間を削減し、夜勤時の負担軽減につなげることが可能です。正常時はあえてお部屋には入らないことで利用者さんの安眠につながり、異常時は即座に把握して迅速な行動が取れるようになります。
「MIERU」では、スタッフの皆さんがご自身で記録を取り、「無駄な時間がどれだけあるか」を知っていただいた上で業務改善策を導入するため、スタッフからも改善の意見が出やすくなります。目指すべきは、そうしたボトムアップ型の状態であり、「MIERU」はそのきっかけとなるアプリだと考えています。
ICTの有効活用が、今後もカギになる
――今回、TOPPANと行われた「MIERU」の改修(リプレイス)の目的をお聞かせください。
中澤:主に弊社内での作業を効率化するために改修しました。「MIERU」によってデータの収集はこれまでに効率化が進んでいたのですが、その後の工程であるグラフの作成・分析などの集計作業に多くの時間を要していました。
分析業務に時間・人手がかかると、コンサルティングの提供数が制限されるため、より多くの医療・介護施設の業務改善を支援する上で、リプレイスが必要でした。
そこで、この業務に関わっているメンバー全員で、コンサル側の視点から従来版の負荷になっている部分をすべて洗い出し、効率化の方法を考えていきました。今回TOPPANさんには、こちらの要望をご相談し、課題や解決方法を整理していただいた上で、リプレイスをご依頼いたしました。
――リプレイスから約3ヶ月経過しましたが、改善効果はいかがでしょうか。
小川:データをグラフに出力するまでの手順をだいぶ削減できたので、集計作業が格段に楽になり、メンバーの間でも好評です。また、以前の方法では、作業効率上、改善を行うビフォーの業務量計測を基にした提案しかできないことが多くありました。今後はビフォー・アフターで2回、業務量の計測を行うことで、改善結果も目に見えやすくなり、改善提案もしやすくなると思います。
また、医療・介護従事者の方に少しでも記録しやすくしていただくために今回、1つの画面で全業務のボタンを表示できるようにしました。これまでは、業務の種類が多いとスクロールする必要があり、それが意外に煩わしいひと手間でしたが、現場ユーザーの利便性もアップしたと感じています。
――医療・介護業界全体における、これからのDX・デジタル活用の重要性についてお聞かせください。また、今後、TOPPANに期待することがあればお聞かせください。
小川:これまでお話ししてきた通り、医療・介護業界においてDX・デジタル活用の重要性がますます高まっていくことは間違いないでしょう。しかし、医療現場で働いていると、ICTに触れる機会が少ないのが実情です。DXについては、現在出回っているツールでも使い方が難しいものや、導入してみたけれど結局あまり使われていないものもあるという印象です。その辺りをつなぐ、デジタルとアナログの橋渡しになるようなものが、何か出てきてくれることを期待しています。
中澤:将来的な視点では、AIをどう活用するかが、一つの課題になっていると思います。医療機関でお話ししていても、積極的な先生は、記録や問診などさまざまなシーンでの活用を試されており、試行錯誤が始まっています。
また、今年度の診療報酬・介護報酬の同時改定でも「ICTの活用」が重視されています。その背景には、業務効率化だけではなく、医療・介護間、職種間の情報連携の強化やデータ活用により、予防を促進し、質の高い医療・介護を実現していくことが求められています。ICTを活用することで報酬が変わる仕組みになっているため、それらに対応できない施設は、今後生き残りが難しくなってくるといえます。とはいえ、システム化にはやはり投資が必要ですし、それを使いこなすためのノウハウも必要です。メディヴァとしては、コンサルティング業務を通じて、こうした医療・介護業界の課題解決のお役に立ちたいと考えております。
これからは、自社でのシステム開発にも取り組んでいく方向です。既存のシステムに関してはメディヴァとしても、より使いやすく、必要不可欠なシステムにしていきたいと考えています。弊社には開発経験のあるメンバーはまだまだ少ないので、その点、TOPPANさんにこれからもお力添えいただけたらと思っております。
TOPPAN 担当からのコメント
TOPPANは、単なるシステムベンダーとしてではなく、お客さまの将来像を見据え、課題に寄り添って伴走いたします。「MIERU」についても、より良いサービスとして展開されていくよう、引き続きご支援したいと思っております。
お話にもあった通り、医療・介護業界では、現場の固定観念を変え、新しい取り組みを推進していく必要性がますます高まっています。その際、インナー向け、対外向けなど、さまざまな角度のコミュニケーションが必要になりますが、弊社では長年培った印刷やその表現を活かして、デジタルを活用した幅広い方法をご提案・提供できます。また、DXにおいて、導入したツールの分かりやすい使い方説明の制作などに対応できるクリエイティブチームがいること、医薬品・医療機器の承認、新発売、プロモーションにおいて、精通した専門のスタッフがおり、その先の各ソリューションにおいても最適なアセットをご用意できる人財が揃っていることがTOPPANの強みです。今後とも、共に業界の課題を解決できるサービスを開発していきたいと考えています。
TOPPAN株式会社
情報コミュニケーション事業本部 ソーシャルイノベーションセンター
山城和也
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2024.05.31