自治体でのメタバース活用例
「メタバース区役所」とは?
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近年、コミュニケーションのオンライン化が急速に進み、進化も遂げており、オンライン上の仮想空間の中でのバーチャルな対話や交流が実現できるようになりました。単なるオンライン通話の領域を超えた体験が可能である「メタバース」への注目が高まっており、企業はもちろんのこと、自治体においても活用が進んでいます。
今回は、自治体のメタバース活用例として「メタバース区役所」などを取り上げ、自治体のメタバース活用の可能性を探ります。
■メタバースとは? 用語の意味を解説
まずはメタバースという用語の意味を押さえておきましょう。
●メタバースとは
メタバースとは「Meta」と「Universe」を組み合わせた造語だといわれています。Metaには「異なる次元からの観点」や「超越した」などの意味があり、Universeには「宇宙・世界」などの意味があることから、メタバースは「目の前の現実や次元とは異なる現実や次元の世界」を指します。
近年、メタバースという言葉はインターネット上の仮想空間のことを指すことが多くなっています。バーチャルリアリティの世界の中で、自分自身の分身であるアバターを介して自由に動き回り、他者とのコミュニケーションや商品・サービスの売買などを通じた交流や経済活動が生み出されています。
●メタバースが注目されている背景
メタバースは海外において、主にオンラインゲームの世界から始まり、2021年頃から日本でも話題になり、コロナ禍によってオンライン化が急速に進んだことも手伝い、メタバースが注目されるようになりました。
日本ではすでに多くの企業が参入を始めており、3D技術や通信技術、モバイル端末の発展や普及から、誰もが容易にメタバースにアクセスできる環境が整いつつあります。
現状、企業におけるメタバースの活用例としては、ゲームやコミュニティの提供や物販、業務におけるオンライン会議やチャットなどが挙げられます。
■メタバース区役所とは? 自治体がメタバースを活用するメリット
企業だけではなく、自治体においてもメタバースの活用が検討されています。その目立った活用例の一つが「メタバース区役所」です。
●メタバース区役所とは
東京都江戸川区はメタバース上に区役所を設け、住民が仮想空間上の窓口で相談や申請手続きなどをすることを可能にする全国初の取り組みを始めています。2023年9月より実証実験を開始しており、今後の一般利用のための検証を行っています。
●メタバース区役所の目的
メタバース区役所を創設した目的として、江戸川区は来庁したくてもできない人に、自宅のパソコンなどを通じて一部の手続きの機会を提供することを掲げています。
実証実験は障害者福祉課にて始められており、自宅から相談や申請手続きができることで、状況の有無に関わらず、同質のサービスを受けられるようにすることを目的としています。
●メタバース区役所でできること
メタバース区役所は、実際の江戸川区役所の外観そっくりにつくられており、アバターを動かして来庁し、窓口での相談などもできるようになっています。
総合案内においては、音声で「どのようなご用件ですか」と職員が応対し、利用者はマイクを通じて声で用件を伝えます。担当課においては職員とチャットで会話をしながら、必要な手続きを行うことが可能です。
・メタバース区役所の課題
手続き上、書類原本を提示する必要があるケースもあることから、すべての手続きをメタバース上で行うために、法規制関連の課題を解決するための方策が検討されています。
■自治体におけるメタバース活用の課題
メタバース区役所の事例は画期的かつ将来性のあるものですが、まだまだ課題もあります。メタバース区役所に限らず、今後、自治体がメタバースを活用していくためには、課題を解決していく必要があります。現時点での主な課題を見ていきましょう。
●法規制への対応
前述の通り、行政手続きには書類原本の提出や提示が必要なものもあり、すべてオンラインで完結できるわけではありません。メタバース上で手続きを行うために、法規制へどのように対応していくかが問われています。
●個人情報の管理・情報セキュリティ
メタバースで行政手続きの完全オンライン化を目指す際に、個人情報の管理および情報セキュリティの徹底が重要になってきます。
また、メタバースで一般的に問題になっていることの一つが、なりすましによる不正利用です。メタバース上では顔が見えない分、他者が不正に本人になりすまして行政手続きを行うリスクがあります。情報漏洩のほか、不正な手続きにより犯罪行為に発展する恐れもあります。これらの予防策を十分に検討した上でメタバースを活用しなければなりません。
●なりすましや誹謗中傷などの利用者同士のトラブルへの予防策
特にメタバースでコミュニティを開設する場合、他者のアバターのなりすましやアバター間の嫌がらせなど、利用者同士のトラブルが生じる恐れがあります。これについても十分な予防策を検討する必要があるでしょう。
■TOPPAN×行政のメタバース活用例
TOPPANは、メタバースプラットフォーム「メタパ®︎」の提供およびメタバース空間の構築を行っていますが、自治体向けにメタバース空間の提供を行いました。メタバースの活用例の一つとしてご紹介します。
神奈川県の「令和5年度『ひきこもり×メタバース』」社会参加支援事業」のコンテンツの一部として、TOPPANのメタバース空間の開発環境と、NHKエデュケーショナルの教育コンテンツの制作ノウハウを組み合わせたメタバース空間が採用されました。
外出せずに気軽に参加できるメタバースを活用し、ひきこもり当事者などへ、他者との交流や就労へのきっかけを創出することを目的として実施されています。
メタバースにおいては、アバターを介した緊張感の少ないコミュニケーションができ、自室にいながらイベント会場に訪れたかのような体験が得られます。これらのことから、今回のメタバース空間は外出が困難なひきこもりの人が、自宅からでも気軽に他者と交流できる場となることが期待されています。
またひきこもりの人の社会参加支援を目的とした「つながり発見」パークをメタバース上に開設し、イベントの開催も行っています。
参加者はパーク内でアバターを介し、他者とテキストチャットや音声チャットを用いたコミュニケーションを取ることができます。また有識者によるメタバース上での仕事紹介や、趣味や仕事に関するマンガコンテンツ、仕事の「やりがい」と「未来」を考えるキャリア教育動画、プチトリップをテーマにした、神奈川県の「映える!」スポット写真などのコンテンツを展開しています。
今回の結果を踏まえ、今後、ひきこもり当事者の社会参加のきっかけとしてのメタバースの活用性について検証していきます。
■まとめ
自治体におけるメタバース活用の今後の可能性は大いに広がっています。課題を解決しながら進めていくことで、住民サービスの拡充や業務効率化につながると考えられます。
メタバースの利用をお考えの場合には、ぜひお気軽にTOPPANへお声がけください。
TOPPANでは自治体さま向けのBPOサービスを実施しております。行政手続きをはじめとした業務を代行しておりますが、業務代行だけではなく、メタバースプラットフォームを活用したメタバース空間の構築とご提供も行っております。ぜひお気軽にご相談ください。
2023.12.11