”周知”から”行動”へ
行動変容PR(Public Relations)
3つのポイント
- エクスペリエンスデザイン本部
- ブランド戦略部
- 鎌田 浩史
私はこれまで、多くの企業のマーケティングを支援させていただきましたが、ここ数年、省庁や自治体が実施する公共事業の広報をご支援する機会が増加しております。
公共事業は、少子高齢化や地方創生、キャッシュレス推進など多岐に渡ります。企業における広報活動は、認知に主眼を置くことが多いですが、公共事業の広報活動は認知だけで終わらず、自治体と生活者のコミュニケーションを実現し、行動変容を促す必要があります。このコラムでは、私がご支援した自治体におけるキャッシュレス推進事業を例にして、公共事業の広報戦略策定において抑えるべきポイントを3つご紹介します。
ポイント① ステークホルダーに合わせた“メッセージ”づくり
公共事業には様々なステークホルダー(利害関係者)がいます。例えば「キャッシュレス推進」がテーマの場合、キャッシュレスサービスを利用する側の”生活者”には、サービスの利便性や気軽さを伝えます。一方、キャッシュレスサービスを利用してもらう側の“店主・経営者”には、導入することによる各種メリットやシステム導入の障壁の低さを伝えます。この例からもわかるように、それぞれの立場や目的に応じて、発信すべきメッセージは大きく変わります。ターゲットが明確ではない曖昧なメッセージでは、誰も関心を持ってくれません。ステークホルダー毎に訴求すべき要素を整理して、最適なメッセージを発信することが重要です。
ポイント② メディア選定と、情報の“量”と“タイミング”
公共事業には、短期間に集中して行う事業と、1年間など長期に渡って行う事業があります。
「どのターゲットに」「どのように情報を届けるか」という戦略を明確にして、広報計画を立案する必要があります。例えば、公共事業の場合、自治体のホームページや広報ツールなどを積極的に活用します。しかし、メインターゲットが若年層の場合、自治体のツールだけで情報を伝え、行動変容させることができるでしょうか?また、限られた予算の中からマスメディアへの出稿を実施するとします。幅広いターゲットに情報を届けることはできますが、数十回の出稿では、誰の目にも触れずに予算が終了してしまいます。
届けたいターゲットや事業のスケジュールに合わせて、複数のメディアを上手く組み合わせた広報計画を立てることが大切です。
ポイント③ 目標設定は“認知”ではなく“行動”
公共案件の広報は認知だけでは不十分であり、ターゲットの行動を促す必要があります。通常メディアは、WEBであればPVやimp、新聞であれば発行部数、TVCMであればGRPなど露出量によって評価されます。想定した目標の露出量に到達しても、ターゲットの行動喚起につながらなければ、その広報は成功したとは言えません。露出量ではなく行動変化を目標にすることが重要です。とはいえ、目標設定は広報戦略を策定する上で最も難しい工程です。私たちは、国内外の成功事例や過去実施した知見を踏まえて策定します。
これまで、3つのポイントをご紹介してきました。もちろん、広報戦略におけるポイントはほかにも多数あります。私たちが常に心掛けているのは、印刷というコミュニケーションで培った生活者との近さを活かしたプランニングです。これから広報戦略を検討される皆様の一助になり、ご一緒できれば幸いです。
2021.04.21