パフォーマンスマーケティングサービス コラム

大林組 社史制作チーム×TOPPAN
130年史制作プロジェクトを通じて考えるこれからの社史制作のあり方と新たなる価値[後編]

TOPPANと各社との対談で、日本企業のデジタルマーケティングの課題解決と未来を探るシリーズ。今回は、株式会社大林組130年史制作プロジェクトを担当した城裕子氏をお迎えして、コーポレートブランディングと連動したこれからの社史制作のあり方とその価値について、そして、オーディエンスの拡大とグローバル展開という新たな成果を創出した、協働プロジェクトの詳細をご紹介します。
※所属企業名・部署名は2022年10月時点


スピーカー紹介

株式会社大林組 技術本部 技術企画室 知的財産管理部
担当部長 城裕子 氏(当時、社史プロジェクト・チーム 部長)
TOPPAN株式会社 デジタルマーケティングセンター コミュニケーションデザイン本部
インタラクティブ一部 3T 主任 宮内祐樹
TOPPAN株式会社 情報コミュニケーション事業本部 マーケティング事業部
エクスペリエンスデザイン本部 プロデュース部 2チーム 谷口千絢


【追加要件】印刷物制作と多言語展開の追加要件にも柔軟に対応

―プロジェクトを進める中で、特に苦労した点は何でしょうか?

城氏:当初は予定していなかった、2点の追加要件への対応ですね。1点目は印刷物の制作です。社史には役職員に配付するほか、お得意先などに贈呈する記念品としての役割もあり、130年の歴史を体感できる冊子として永続性や一覧性に優れる紙媒体としても残したい、と社内から要望があり、後から「大林組創業130周年記念誌」の制作が決定しました。こちらは当社の広報部門であるコーポレート・コミュニケーション室が担当しました。

谷口:Webサイトとの差別化を図るにあたり、写真中心の記念誌とし、複数名の著名人にエッセイをお願いするなど、冊子ならではの付加価値のあるコンテンツ作りをされたいというご要望に対して、専門チームも協力して、よいものがご提供できたと思います。

<大林組創業130周年記念誌>

城氏:2点目は、多言語展開です。前回の120年史の時はグループ内向けの英語版はありましたが、グローバルに社外公開するのは今回が初の試みです。それも、当初は英語版のみを予定していたのですが、当社が事業展開する海外のグループ会社の社員やお客様にも届けたいとの想いから、中国語(繁体字)、タイ語、インドネシア語、ベトナム語の4か国語版を追加制作することが決まりました。これも大変でしたよね。

宮内:当社は多言語を専門とする翻訳チームもあり、連携して対応していたのですが、ここまでの規模のWebサイトでの多言語展開は、これまで官公庁のお客様くらいしか実績がありませんでした。また、専門用語や歴史の記述も多い社史は、特有の難しさもあります。

城氏:多言語展開の場合、通常は要約する、そもそも載せないといった切り捨ての判断をすることが多いと思いますが、今回の目玉であるスペシャルコンテンツはすべての言語で見せたかった。でも、どれだけ大変なのかはやってみないとわからない。こちらとしては無理強いするつもりは毛頭なくて、難しければ言ってくださいとお伝えしたのですが、宮内さんは『やりましょう』と。チャレンジャーだなと思いました(笑)。

宮内:私たちとしてもやりたい意思がありました。大林組さんの実績を我々と共に作り上げるコンテンツとして、世界中の人たちにも見てもらえる、チャレンジできる機会を与えていただいたなと。しっかりとした、よいものを見てもらいたいという想いがありました。アジア系の言語は日本語よりも文字数が増える傾向にあるのですが、スペシャルコンテンツは動きがあるので文字数の制約も厳しい。デザインやレイアウトはこのままでいいのか、変えるべきなのか、かなり議論を重ねました。Webチームだけだったら難しかったと思いますが、翻訳チームと年史チームの記事を作るスタッフが連携して『こういう表現、言い回しなら可能か?』といったところをうまく連携して、進行していきました。

城氏:Webならではのよい点というと、すでに社外公開中のサイトへのリンク、サイト内検索、画像をクリックすると拡大されるといった、デジタルならではのメリットも盛り込むことができた点かと思います。

【成果と派生展開】社内外から大きな反響、その他のコンテンツ制作へと派生

―プロジェクトの期間はどのくらいだったのでしょうか?

城氏:プロジェクトがスタートしたのが2020年4月、TOPPANさんとの制作開始は8月からでした。そして日英のサイト公開が翌2021年12月、記念誌の完成が翌2022年1月。そのほかの言語版は英語を基にしたため少し遅れて、2022年3月の公開です。

―公開後の反応はいかがでしたか?

城氏:海外拠点の社員たちから『自分たちの事業を取り上げてもらえて嬉しい』『自社の海外展開の歴史を知れて勉強になった』という声が聞かれました。国内でも実際に手元に届いた記念誌を見て『いいですね!』と感想をわざわざ伝えてくれる社員もいました。私たちチームの仕事ではなかったですが(笑) 。また、同業他社の社史担当者に、『Webメインで制作するのは画期的。デザインが素晴らしい。』と。業界では年史=紙が常識ですので、『大林組さんならではのチャレンジですね。』とも言っていただきました。さらに今回はスマホでの見やすさにも注力いただいたので、これから入社を検討するような若い世代にも、届きやすくなったと思います。

―プロジェクト終了後の展開はいかがですか?

城氏:TOPPANさんとはこれまで、コーポレート・コミュニケーション室が主管するカレンダー制作などのお付き合いはありましたが、デジタルコンテンツでは今回が初めてでしたよね。

谷口:はい、今回のプロジェクトがきっかけになり、その後さまざまな部署からお声がけいただけるようになりました。主なものに2022年3月に竣工した次世代研修施設「Port Plus®」の施設内サイネージや、「WOOD VISION」のWebサイト制作などの協力、社員とご家族向けのSDGs啓発イベントの企画提案などがあります。

宮内:プロジェクトを通じて社内の方々との面識も生まれ、何より我々が大林組さんについて相当詳しくなりましたので、これからも当社がお役に立てることがあれば、お手伝いしたいと考えています。

【両社が感じたお互いの強みとこれから】

―今回のプロジェクトを通じて、お互いの印象や強みについて、どうお感じになりましたか?

宮内:TOPPANから見た大林組さんの印象ですが、制作を通じて関連される各部署に素材を提供いただいたり、こちらが提出したコンテンツの監修にご協力いただいたりする際のフィードバックの精度とスピードに驚きました。大企業なのに部門間の連携がすごいなと。内容について正確性を期すための細かなご指摘も多く、クオリティに関して最後まで妥協しない姿勢にも、学ばせていただきました。

城氏:当社の社員は皆、真面目なのです(笑)。仕事柄、正しさ、細かさを求めるところがあって、TOPPANさんも大変だったと思います。

宮内:制作の過程において、どうしても間に合わずに詰めが甘い段階で提出すると、必ず『ここはこれから作り込みますよね?』とご指摘が入る(笑)。厳しいな、妥協できないな、と思う反面、細部までしっかりご覧いただけていることに嬉しさも感じていました。

城氏:私から見たTOPPANさんの印象は、とにかく若さ。いい意味で怖いもの知らずというか、エネルギッシュでチャレンジ精神がある、とずっと感じていました。当社ではプロジェクトマネージャーは少なくとも課長職ぐらいにならないと他の部門の方を動かせず、20代の人ではなかなか難しいのですが、TOPPANさんは担当の方が皆さん若くて、機動力があるなと。社内では偉い人のチェックとかはあるのでしょうか?

谷口:もちろんあります(笑)。でも、ダメ出ししたり動きを止められたりするというよりは、責任は持つから現場はお客様のためであればやりたいことをやりなさい、と言ってもらえる風土はありますね。

宮内:現場としては自由な発想で提案できたのでやりやすかったですね。社内チェックでもう少し手堅くいった方が安全なのでは、といった指摘が入っても、このやり方の方が今回は良いと思う理由をきちんと説明して理解してもらって。

城氏:業界が違うということもあるとは思いますが、TOPPANさんも我々と同じくらいの歴史がある会社ですが、過去の実績を踏まえてデジタルとか新しいことに意欲的に取り組んで、成果を上げておられる。それこそCMじゃないですけど、まさに突破するTOPPAN、を実感しました(笑)。

宮内:ちょうどプロジェクトの最中に当社も「TOPPA!!! TOPPAN.」のCMが始まりました。たまたまですが当社と続けて大林組さんのCMが流れるのを目にしたときは、勝手に運命を感じていました(笑)。

―それでは最後に、これからの社史制作、コーポレートブランディングについてのお考えをお聞かせください。

宮内:まさにこうしたお悩みは、多くの企業に共通するところじゃないかと思います。ビジネスを取り巻く環境も大きく変化していますから、各企業がコーポレートサイトや周年告知のあり方を見直しておられるのも、その現れだと考えています。これからもTOPPANの持つ総合力の強みを活かして、コーポレートブランディングの課題解決に取り組んでいきたいと考えています。

城氏:両社がほぼ同時期に、新たなブランドビジョンを掲げてCMや広告展開を行うタイミングだったのも奇遇ですよね。そういう部分でも、当社の意図したところを深く理解していただけたのかな、と。今回、TOPPANさんに提案いただいて、社史作りを周年事業の枠を超えた取り組みにしていただけたと感謝しています。いまがあるのは130年という歴史を積み上げてきたから、ということを社内に浸透させるという広報の意図ももちろんあるのですが、これからの社史作りは、そうした訴求で愛社精神や帰属意識を高めることに加えて、一般の方々への社会貢献活動の周知や、知名度を高めることも意識しないといけないのだと思いました。

谷口:当社もそう考えて活動していると感じます。いまだに印刷会社としてのイメージが強く、『TOPPANってWebも作っているのですね』と言われますから(笑)。デジタルマーケティングだけでなく、SDGsやメタバースといった新たな領域の活動は、まだまだ認知されていません。もっと訴求できれば、営業の立場としても新たな商談につながると期待しています。

―本日は、ありがとうございました。


2023.11.30

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