【事例】株式会社ロッテ様|
データ基点のマーケティングを加速!
高精度の情報発信を実現した
「顧客ID統合」とは?
一部の先端的な企業をのぞいて、複数ブランドをお持ちのメーカーにおいては、ブランド単位での顧客管理やマーケティング施策を行っていることが一般的ですが、それらをOneIDで管理し、顧客の嗜好や行動履歴に応じて、ブランド横断のアプローチを行うことは今後ますます重要になっています。
その一方で、消費者のマルチデバイス利用が加速。スマホとPCを両方活用している顧客を同じ顧客として把握し、管理することも求められており、ブランド横断で顧客情報を統合管理することは、大変負荷の高い取り組みです。
今回はこの課題にいち早く着目し、ブランドごとに管理していた顧客情報を統合に至った株式会社ロッテ様の事例をご紹介します。
同社は顧客とのエンゲージメント強化を目的として、TOPPANの「ID統合プラットフォーム」を活用した顧客ID統合を実施。これまでサービスごとに分かれていた顧客IDを統合することにより、より精度を高めた情報発信のためのプラットフォームを構築しました。
今回の実施に至った背景から実現へのプロセスについて、株式会社ロッテ マーケティング本部 マーケティング戦略部 コミュニケーション戦略課の酒井喬亮氏にお話を伺いました。
プロジェクトを推進するにあたり意識された課題や苦労された点など、顧客ID統合を検討されている方はぜひ最後までご覧ください。
※所属企業名・部署名は2021年5月時点
目次
■【背景・課題】
~お客さまとの情報・購買接点の変化、多様化への対応
~分散する顧客情報を統合し、データ基点のマーケティング活動を加速させる
■【プロジェクト推進・ベンター選定のポイント】
~TOPPANの顧客視点で物事を捉える姿勢に共鳴
~自動化と外部プラットフォームとの連携を意識
■【成果・今後】
スピーカー紹介
株式会社ロッテ マーケティング本部 マーケティング戦略部 コミュニケーション戦略課 酒井喬亮 氏 |
■【背景・課題】
お客さまとの情報・購買接点の変化、多様化への対応
―今回のプロジェクトの背景と狙いについてお聞かせください。
ひとことで言えばお客さまとの情報・購買接点の変化、多様化への対応ということになります。
例えば、これまでは多くの方に商品を認知いただくための手段としてはTVキー局のCMが、最も有効でした。
しかし、いまではYouTubeやNetflixをはじめ、情報接点が非常に多種多様化しています。
効率的な広告宣伝という観点から、よりお客さまに合った情報を的確に、適切なタイミングで届けるためには“絞りながら拡大する”ことが求められます。アメリカなどでは既にTVとインターネットを組み合わせたコネクテッドTVが普及し、DSP(Demand-Side Platform)を活用したターゲティング広告が実施されています。
当然日本も例外ではなく、今後より精度の高いターゲティングアプローチを実行するためには、自社で自由に活用可能な顧客情報基盤を持つことが欠かせない、と数年前から考えていました。
もう一つ、当社の活用できる顧客情報の多くはサードパーティデータでした。活用に費用がかかり続けることに加えて、GDPR*1やCCPA*2、個人情報保護法の改正などの動きから、お客さまに直接使用の許可をいただけるファーストパーティデータ化する必要性が高まっていると考えました。そのため、当面はサードパーティデータも活用しつつ、顧客IDを軸とした顧客情報基盤を自社で構築するプロジェクトを進めました。
*1 GDPR:欧州のEU一般データ保護規則 *2 CCPA:米国カリフォルニア州消費者プライバシー法
分散する顧客情報を統合し、データ基点のマーケティング活動を加速させる
―従来の顧客情報管理における課題と、新たな基盤に求めた要件はどのようなことだったのでしょうか?
従来、ECサイトや「LOTTE land」など、サービスごとに個別の会員管理を行っていました。さらに、大きくWebログ情報を持つデータベースと、個人情報を持つデータベースの2つに分かれていました。まずはこれらをメールアドレスなどの顧客IDを軸に一つに統合し、データ基点のマーケティングに活用しやすくすることが求められました。
加えて当社内の体制や設備的に、日常業務の中でマーケターが個人情報を取り扱うことはできません。そのため、個人情報には直接アクセスできなくても、マーケターがデータベースのIDのみWebログの情報と紐づけ・突合でき、Treasure Dataで解析することができる仕様を求めました。現状はデジタルのセクションだけの利用ですが、将来的にマーケティングセクション全体で取り扱うことを踏まえると、一つのデータベースから必要となるデータだけをその都度取り出せて、個人情報の取り扱いを気にせずマーケティング施策が行える仕組みが必要と考えたのです。
■【プロジェクト推進・ベンター選定のポイント】
―プロジェクトを進めるにあたり、社内のコンセンサスをどのように得られたのでしょうか。
顧客ID統合の必要性を説き続けました。その際は、経営層やマーケティング部門には顧客コミュニケーション強化によるブランディングの観点、ECや宣伝にはキャンペーン施策における効果、デジタル運用チームにはファーストパーティデータの必要性など、その部門が必要としている情報を提示することを意識しました。そして、ベンダー選定して2019年12月からプロジェクトをスタートさせました。
TOPPANの顧客視点で物事を捉える姿勢に共鳴
―プロジェクト推進にあたり、ベンダーにTOPPANを選定した理由をお聞かせください。
TOPPANが我々のプロジェクトの本質を理解してくれた、同じ目線で考え、話ができた、ということに尽きると思います。デジタルマーケティングと一口に言ってもその領域はものすごく広く、専門分野が細かく分かれています。
そのため、ある特定エリアの技術に優れていたとしても範囲が少しずれると話が通じない、ということがよく起こります。その点、TOPPANは顧客視点という根本的な思想が当社とも近く、我々が何を目指していて、同じ目線で物事を考える、話ができる数少ないベンダーだと感じました。顧客をシステムのユーザーとしてではなく、商品の購買者としてのお客さまと捉える姿勢が、こうした顧客基盤の構築には欠かせないと感じました。
自動化と外部プラットフォームとの連携を意識
―構築に際し意識した点、苦労された点はありますか?
一つは徹底して自動連携することです。というのもデジタルマーケティングやデジタルツールは、まだまだ「アルゴリズムを理解しているエンジニアにとって」使いやすくなりました、というレベルだと感じています。企業にはジョブローテーションがあり、何年も同じ業務に携わるわけではありません。ですので、あらゆる人が業務で使いこなせるものにしなくてはならず、極力、人手による処理をしなくて済む設計にしました。
もう一つは、EC側のプラットフォームの連携です。そもそもセキュリティポリシー的に外部と連携する設計ではありませんでしたので、粘り強く説得して進める必要がありました。結果としてそちらにデータを持たせたまま常時接続しない仕組みとしたため、セキュリティ要件のすり合わせや、データに差分が発生した際の取り扱いなどについては、TOPPAN側も苦労したと思います。
データ統合はクラウドファースト、APIファーストの時代には、データがどこにあるか、物理的に一つの置き場にすることが重要なのではなく、「何で」統合するかが重要だと考えます。どういった使い方をするのかにより「何で」の軸は変わるでしょう。当社の場合はそれが顧客ID、ということです。ここを忘れてしまうと、データが一つのシステムにまとまっただけで、やりたいことができないということになりかねません。そのため、データ統合を実施するにはアドテクノロジーの仕組みまでを正しく理解しておく必要があります。
―プロジェクト推進中のTOPPANの評価をお願いします。
皆さん真面目ですし、頼んだことは確実に実行してくれる。よく「伴走する」という言い方をしますが、TOPPANはまさに我々と伴走して、確実にコミュニケーションしながら、プロジェクトを推進してくれました。
■【成果・今後】
―最後に、今回のプロジェクトの成果と今後の展開、TOPPANへの期待についてお聞かせください。
顧客IDを軸としたデータ統合の基盤が実現できました。今後、今回構築したプラットフォームで分析したデータを起点に、さらに精度を高めたお客さまへの情報発信を行っていきます。商品を認知いただくための広告に加えて、興味を持っていただいた方にその嗜好に応じた有益な情報を、さまざまな情報接点を通じて確実にお届けする。そのことで流通、卸からスーパー、コンビニの店頭まで、リアルのビジネスをデジタルでつなぎ、支えていければと考えています。お客さまの購買接点、情報接点が大きく変化し、より精度を高めたデータ活用が求められていく中で、TOPPANにはこれからも幅広い領域で、データ解析やツールの活用などさらに知見を深めていただくよう、期待しています。
2023.11.30