“共創型”のデータビジネスを考える
DATA CAMP 2018 TOKYO
TOPPANは2018年11月14日、「共創型」によるデータビジネスを推進するイベント「DATA CAMP 2018 TOKYO」をフクラシア丸の内オアゾ(東京都千代田区)にて開催しました。
本イベントでは、データ活用の共創ビジネス戦略を担うキープレイヤーが登壇し、進化する様々なデータ活用テクノロジーを組み合わせた共創型データビジネスの未来像についての講演を行いました。本コラムでは講演の内容について、ご紹介させていただきます。
※所属企業名・部署名は2019年3月時点
Session1 “共創型”のデータビジネスを考える
データの活用は“自走型”ではなく“共創型”がメリットをもたらす
まず、TOPPANのコミュニケーションデザイン本部の梅川は、自社単独で進める“自走式”と比較して、様々なプレイヤーと連携してデータビジネスを“共創型”で推進することの重要性を語った。“共創ビジネス”によって、「AIとの共創によってデータ活用推進スピードを加速させることができること」「ステークスホルダーとのデータ共有を進めることでマネタイズポイントを増やせられること」「新しいテクノリジーを導入する際には様々なリスクが潜んでいるが、データやセキュリティの専門家と連携(共創)することで、リスクを回避することができること」という3つのメリットを強調した。
日本企業こそAI活用による潜在的経済効果が高い
「日本ではAIを十分に活かしきれておらず、AIとの協働に向けた意識も遅れていますが、日本でAIが活用できた場合、経済成長への寄与がとても大きくなる。」と語るのは、アクセンチュアの保科氏。「AI導入によって、ヒトの仕事が減るのではなく、AIのトレーナーやAIのエクスプレナーといった“AIを使いこなす”ための、新たな仕事が生まれ始めている」としている。
AI活用に欠かせない組織づくりと社外との共創ビジネス
また、同氏は「AIを効果的に活用するために、データのセキュリティ面やAIの品質を管理するための、“データインテリジェンス部門”の設置が重要」であるのと同時に「AIを活用する際、自社内開発と比較して、社外とのコラボレーションを行う企業は約2倍のスピードで企業価値を向上させることができる」と社外と共創ビジネスを行う重要性も強調した。
Session2 DMP/CDPを活用した共創型のデータ連携
大切なのはデータを「シェア」し、活用範囲を「拡げる」こと
TOPPANのコミュニケーションデザイン本部の後藤が、当Sessionをリード。自身の体験から、データを有効活用していくために「社内外で集めたデータを各部門にいかにシェアできるか。複数のデータを統合し、活用範囲を拡げ、意思決定にどう生かすかが重要。」と語る。
様々なデータを統合・管理するプラットフォーム“DMP/CDP”構築のトッププレイヤーである、トレジャーデータ堀内氏、Legoliss加藤氏に対し、データの効果的なシェアのさせ方、使いこなすためのデータの拡げ方について、効果の高いケースや進め方について問いかけを行った。
明確なメリットの提供がデータの価値を高める
「企業内でデータの価値を高めてシェアをするには、部門間やグループ会社間でそれぞれデータの統合をすることでそれぞれにどのようなメリットがあるのかをはっきりさせ、同意をとることが重要です。」と語るのは、トレジャーデータの堀内氏。お互いがメリットを明らかにすることで、自部門だけで統合したデータを使いたいという状況にならずに、部門間の連携が良い方向に向かうという。また、サービスを利用するユーザー側も、データを提供するだけでメリットを享受できないという状況ではなく、データを渡すことで便利になるようにすることで、データの獲得から活用までがうまく回るようになっていくと語る。
自社だけでは捕捉しきれないユーザーデータの活用が鍵
Legolissの加藤氏は、様々な企業のデータ活用を支援する中で、データを活用したくても自社のデータが少ない、足りていないという相談を受けることが多く、「外部のデータが欲しい」というシンプルなご要望をこれまで何度も聞いてきたという。その中でパブリックDMPや自社データ、パネルデータに目が行きがちだが、大事なのは自社のブランドに接触しているけど、自社のデータベースの中にいない方、ここをどのようにしていくかが重要になってくると語る。
Session3 AI品質をつくる教師データ作成の最前線
AI活用のキーは、データの品質とスピード
Session3では、Defined CrowdのAya Zook氏にAI開発で重要となるポイントについて語っていただいた。Zook氏は、「今までソフトウェアやシステムの開発では、どれだけ早く大きくできるかで勝負が決まっていましたが、AIの時代では、市場で早く成果を生み出すために、品質が高いデータを、どれだけスピーディにAIに投入できるかが鍵になる」と強調する。
継続的なデータの供給とチューニングがAIを成長させる
そのような中で、Zook氏は、AI活用の現場では、データが足りない、または質が悪いということで、思うような結果が得られていないということも多いという。また、AIは一度データを与えたら終わりではなく、より良いデータを与え続けることが重要であり、加えて人間がチェックに入り、チューニングをしないと良いものはできないと続けた。
アウトソースがAI活用の加速を実現する
まだまだ多くの企業がAI活用にハードルの高さを感じている中、データ不足、あるのに使えない、データの量は多いが価値がわからない、AIのことがわかる担当者がいないなどでAIを活用したプロジェクトが進まないという企業も多い。
しかしZook氏はそのような企業こそ、Defined Crown社のようなパートナーと組んでデータをアセット化して、アウトソースするようなやり方が効率的で、面白いことができると語った。
Session4 データを起点としたビジネスの再構築
部門間の情報連携によって、データ予測精度を高める
ARISE analytics社は、約4000万の顧客データの顧客基盤を有するKDDI社と、アクセンチュア社によるジョイントベンチャーで、多くのデータサイエンティストが所属しています。そのARISE analytics社で代表を務める家中氏に、 ARISE analytics社の事業の1つであるKDDI社向けのコンシューマー事業分析で、au解約者数の将来予測に関してお話頂いた。家中氏曰く、「分析開始当初、満足のいかない誤差率でしたが、営業部門とのコミュニケーション強化を行い、現場経験による情報をデータに組み込んだことで、誤差率を10ポイント以上改善することに成功した」のだという。
データから、よりお客さまを理解することで事業課題を改善
また、お客さまの解約意向を高い精度で予測。さまざまなお客さまのデータから、料金や端末、サービス利用に対する不満と要望を分析することで施策の効率化と最適化を実現。2017年3月から2018年3月の1年で、競合がシェアを縮小する中、auのみシェアの増加に成功という成果に繋がっていると語る家中氏。
データドリブン経営に必要なのは組織づくり
データを経営に活かす上で、「様々なデータを集めること」「様々なデータの分析が行える優秀なデータサイエンティストがいること」に加え、データだけでは予測できないことに対し、「事業部門との強力な連携」によって、現場の知見を活かすことのできる組織づくりが重要となると家中氏は語る。
Session5 エッジコンピューティングとAIで創るデジタルストアの未来
産学連携によるアクションリサーチ型のアプローチ
「AIを社会で実際に使い、色々な社会課題を解決する」と語るのは、北海道大学「調和系工学研究室」の川村秀憲教授。こちらでは、ラジコンの自動運転で人間の運転におけるゆずり合いを再現する研究や、ディープラーニングを用いてファッションの主観的判断をAI に理解させる研究などに取り組んでいるという。その中で、自分たちで作ったものを、実際に使える場を作り、使ってもらうことでデータをピックアップするMarket Inの研究を実施するため、産学連携での活動を行っていると川村教授はいう。
リテールでも始まる、AIを用いた新たな取り組み
北海道大学の「調和系工学研究室」との連携によるAI技術開発と、実際のリテールの現場を利用した実証を通じて、リテール現場の生産性革新を目指すベンチャー企業であるAI TOKYO LAB(現AWL株式会社)。こちらでCTOを務める土田氏は、リテールの現場であるサツドラ(ドラッグストア)でエッジコンピューティングの技術用いて、従業員の動きや顧客の行動をAIカメラの中でデータ化することで、プライバシーの問題やコストの問題を解決し従業員の仕事の効率分析や、顧客の購買や非購買至るまでのプロセスのデータ化に成功し、ECサイト並みのデータ分析を可能にしたという。
トッパンがチャレンジする「顧客体験型デジタルストア」
これらの話を受け、TOPPANの情報コミュケーション事業本部の畑は、「デジタルストア元年であった2018年、無人決済化に注目が集まっていますが、顧客体験の設計こそが重要になってきます。顧客の行動をトラッキングし先回りすることで、顧客が心地よく買い物できる店舗を作っていく実証実験を、トッパンでも初めています。」と述べた。
Session6 AIのスピードスタートを実現するモデル設計
ビジネスをAI化するために必要な3つの力
今や、どのようなジャンルのビジネスにも使われ始めているAI。多くの企業にとっていかにビジネスに落とし込んでいくかということが今後の課題となっている。その中で、アイズファクトリーの筒井氏は、AIをビジネスで活用するには、分析でビジネスの課題を「解く力」だけでなく、ビジネス課題を「見つける力」、分解した解を意思決定に「使う力」が重要だという。
AI活用の障壁となる人材問題
また、多くの企業がAIを導入する上で課題としているのが、担当者がいない、データ分析とビジネスの両方ができる人材がいないという問題である。このような状況の中で、筒井氏は「モデル設計やデータ加工および実装部分は、人が担っていく状況は続く」という。
共創型アプローチで不足する機能を補完する
しかし、筒井氏はそれでも「それぞれの専門家がチームとして機能するのであれば、それは十分にAI活用を成しえるチームであるといえる」と、共創ビジネスを進めることでチームに専門的なスキルをもったキープレーヤーを揃えることも可能となると強調。
また、「全ての機能が一社で集まっていることはない中で、共創型というのは必要なところを補っていくというところも大きな要素としてあるのではないかと思う。」と付け加えた。
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2022.06.29