コラム

コロナ禍における生活者意識から、
アフターコロナのブランド・サービスの
あり方を考える

  • エクスペリエンスデザイン本部
  • ブランド戦略部 コンサルタント
  • 井口 実夏

新型コロナウイルスの感染拡大によって、社会のあり方や人々の暮らしは大きく変わりました。短期間に、ある種の強制力のもとで変化を余儀なくされた経験は、人々の心理にも影響を及ぼしているはずです。変化を柔軟に受け入れる人から、これまでのスタイルを貫きたい人まで、それぞれの価値観の差は大きな分断になってしまうのか、それともお互いを尊重しながら共存できるのか。コロナをきっかけとして世の中は大きく変貌していくと考えられます。
ただし、個々人の価値観や環境の差によって、変化を歓迎する人とそうでない人に分かれるのではないでしょうか。コロナによってますます多様化する生活者を理解し、自社の商品・サービスの価値と生活者の価値観を結び付けて対応していくヒントとしてご活用いただけることを目的に新しい時代をより良くするためのきっかけになるようにと、ブランドコンサルティングユニットでは「コロナ意識度スケール」を作成しました。


コロナ意識度スケール

コロナ意識度スケールとは、衛生意識や飲食、この先の生活に対する思いなど計8つのテーマに対して設定した設問と評価点を定めた選択肢の中から、回答者の感情に最も近いものを選択してもらい、合計点数から新型コロナウイルスへの意識度レベルに応じた5タイプの人物像のうち、どのタイプに当てはまるかを評価するものです。
一度目の緊急事態宣言下に作成し、これまでにTOPPANのグループ会社である株式会社ONECOMPATHが運営する国内最大級の電子チラシサービス「Shufoo!(シュフー)」の利用者を対象に初期調査や新型コロナウイルス感染拡大防止への意識度アンケートなどが実施されています。

(図解)コロナ意識度別の人物像

コロナ意識度スケールで重要なのは二点です。
一つ目は、コロナ意識度によって行動や判断に違いが出ることです。
二つ目は、意識度の高低差が大きいほどお互いを受け入れがたいということです。
意識度の高い人にあわせた価値提供を考えるなら、オンライン上の体験が適していますし、意識度の低い人にはリアルの場に早期に戻ってきてもらう工夫をする必要があります。
しかし、リアルを重視する層にオンラインの体験は響きづらいですし、コロナに対する警戒心の高い層は低い層のふるまいを許容しづらいということになります。
そして、企業はどちらかの層にフォーカスすれば良いという単純な話ではないのです。なぜなら、人々の意識は移ろいやすいからです。

コロナ禍の意識変化とこれから

コロナ意識度スケール調査では、2020年6月の時点では「バランス型」を中心に山をつくるような比率でしたが、2020年後半から2021年初頭にかけて「自由型/誘導型/バランス型」が減少し、「インドア型/籠城型」が徐々に増加するという傾向が出ています。
これには2度目の緊急事態宣言が影響していることが考えられますが、それ以外にも、すでに多くの人は出口が見えないなかで新しい暮らし方に馴染んできているということなのかも知れません。
しかし、この先ワクチン接種が進むなど感染拡大が落ち着いて、今ほどの警戒が必要なくなるときが来たら、今度は反対に、意識度の低い人が徐々に増えてくると考えられます。
そうなると、コロナ禍でシフトさせた戦略が正しかったのか、再度シフトしなければならないのかという決断を迫られることになります。

今だからこそ考えるべきこと

コロナ禍、そしてアフターコロナを生きる企業にとって必要なのは、多様な価値観とどのように向き合い、どんな未来創りに貢献できるかをいまの時点から考えておくことです。
短期的な視点においても、これまでのコミュニケーションを見直し、日々移り変わる状況に寄り添える新しい顧客体験を設計していくことも大切です。
コロナ禍以前とは大きく変化した人々の意識に寄り添いながら、改めて自社のブランドを見つめなおすタイミングに来ているのかもしれません。

2021.05.10

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