Cookie規制とは?デジタルマーケティングへの影響と今後の対策を考える
Googleは2021年6月24日、Webブラウザ「Chrome」におけるサードパーティーCookieのサポートを、2023年半ばから後半までの3カ月で段階的に廃止する見込みであると発表しました。当初予定から1年近く延期されたとはいえ、「Safari」を提供するAppleはGoogleに先んじて2020年3月にサードパーティーCookieを完全ブロックするなど、Cookie規制の流れは加速しています。
そこで今回は、そもそもCookie(クッキー)とは何か、なぜCookieを規制する動きが強められているのか、さらにCookie規制によるデジタルマーケティングへの影響と対策について、トッパンのクッキーレス時代に向けた新たな取り組みを交えて解説します。
<目次>
■Cookieとは~Cookieの仕組みとユーザー/サイト運営側のメリット
■Cookie規制はいつから?規制が強まる理由と現状
■2種類のCookieデータの違い
1|ファーストパーティーCookieとは
2|サードパーティーCookieとは
■Cookie規制の影響
1|Web広告施策への影響
2|企業のデジタルマーケティング活動への影響
■Cookie規制への対応策
1| 広告以外の集客チャネルの強化
2|新規獲得の効率化とナーチャリングによる顧客定着率向上
3|カスタマージャーニーを意識し、消費者から「選ばれる」仕組み作り
■まとめ~トッパンのクッキーレス時代の新たな取り組み
Cookieとは~Cookieの仕組みとユーザー/サイト運営側のメリット
Cookie(クッキー)とは、WebサーバーやJavaScriptから送られ、ユーザーのブラウザに保存される、テキストファイルのことです。CookieにはIDが記載されており、そのIDによりWebサイトを閲覧したユーザーを識別。再訪者であるか否かを判断することができます。
Cookieは私たちが快適にWebサイトを閲覧するために欠かせない仕組みです。ユーザーが初めてWebサイトを訪れるとブラウザへCookieが送信され、ページを閲覧した履歴やログイン情報などを記録。以降、訪問する度にCookieに行動履歴が書き込まれてデータとして蓄積されます。
この蓄積されたCookie情報はSNSやWebサイトでログインの手間を省く、ECサイトでカート情報を引き継ぐ、一時停止していた動画を途中から再生するなどの働きを行い、ユーザーの利便性を向上します。
またサイト運営側も、Cookieによってサイト訪問者のユーザー属性や閲覧履歴、買い物履歴などが把握可能。見込み顧客の分析など、デジタルマーケティング施策において大きな役割を果たしています。
Cookie規制はいつから?規制が強まる理由と現状
このようにユーザー、サイト運営者の双方にとって有効なCookieが、なぜ規制される動きに向いているのか。それは、サードパーティーCookie(3rd Party Cookie)がWebサイトを離れた後のユーザーの行動を追跡するため、個人情報保護法(プライバシー)の観点で、問題視されているからです(サードパーティーCookieが何かは、この後で解説します)。
EUにおけるGDPR(EU一般データ保護規則)やePrivacy Regulation(eプライバシー法)、米国・カリフォルニア州で施行されたCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)など、グローバルで個人情報に関わる法規制の強化が進んでいます。
こうしたCookie規制の流れは日本も例外ではなく、2020年6月に個人情報保護法が改正となり、2022年6月に施行されます。現法律下ではCookieは個人情報には値しない「個人関連情報」と定義されていますが、改正後は日本においてもCookieを活用したデータの収集と利用について、同意取得が義務付けられます。
この問題点を正しく理解するために、Cookieの2つの種類の違いについて解説します。
2種類のCookieデータの違い
Cookieデータには、「ファーストパーティーCookie」と「サードパーティーCookie」と呼ばれる2種類があります。
ファーストパーティーCookieとは
ファーストパーティーCookieとは、「訪問しているWebサイトのドメインから直接発行されたCookie」のことです。ファーストパーティーCookieは自サイトの訪問ユーザーに対して精度の高いトラッキング(行動の追跡)が可能ですが、他のサイトを横断してトラッキングすることはできません。
サードパーティーCookieとは
サードパーティーCookieとは、「訪問しているWebサイトとは異なるドメインから発行されたCookie」のことです。Webサイトに訪れた際、訪問したWebサイトからファーストパーティーCookieが発行されますが、Webサイト内に広告バナーが設置されている場合は広告配信サーバーからも同様にCookieが発行されます。この際、広告配信サーバーがWebサイトと別ドメインであれば、サードパーティーCookieとして処理されます。ドメインの所有者が同じでも、異なるドメインで運営しているWebサイトの場合は、Webブラウザ上ではサードパーティーCookieとして処理されます。
例えばオンライン通販サイトを見た後で別のWebサイトを開いたら、さっきまで見ていた商品の広告が表示されていることがあります。この仕組みは、サードパーティーCookieを活用した広告配信によるものです。
このようにサードパーティーCookieは複数のWebサイトを横断し、ユーザーの行動履歴を収集した上で、その関心に合わせた広告を配信するなどの働きをしてくれる一方で、ユーザーが意図していないところで行動履歴や趣味嗜好のデータを収集し使用することから、「個人情報の保護の観点から規制するべき」との声が、年々強まっているのです。
Cookie規制の影響
Cookie規制の影響1 | Web広告施策への影響
サードパーティーCookieを活用した代表的な例が、リターゲティング広告です。リターゲティング広告とは、一度Webサイトに来訪したユーザーに別のサイトで広告配信を行う追跡型の広告です。従来、他の広告と比べコンバージョン獲得における費用対効果が非常に高く、主流となってきました。しかし、その多くは各媒体で用意しているトラッキングコードをサイトに設置し、第3者のアドサーバーからサードパーティーCookieを付与する仕組みのため、今後はCookie規制の対象となります。このほか、DSPを用いたターゲティング配信、パブリックDMPを使った顧客の可視化、DMPを介した他社とのデータ連携などもできなくなると考えましょう。
Cookie規制の影響2 | 企業のデジタルマーケティング活動への影響
企業のデジタルマーケティング活動では、これまで複数のデータを紐づけてユーザーを識別し、年齢などのデモグラフィック属性および閲覧行動から興味を推測してきました。しかし、Cookie規制後はこれらがすべてできなくなります。また、Cookie規制により広告接触したユーザーの行動計測や、その広告でコンバージョンに至らなかったユーザーが、他のポイントでコンバージョンに至るまでの過程を分析するアトリビューション計測にも、大きな影響を及ぼします。
Cookie規制への対応策
Cookie規制によりサードパーティーCookieが活用できなくなることで、企業はユーザーの行動把握が難しくなり、従来のマーケティング手法のいくつかは継続が困難になります。この状況を踏まえ、企業はどのような対応策を取る必要があるのでしょうか。
オペレーションレベルでは「DSP以外の集客方法を検討」「リターゲティング以外の配信手法の検証」「計測ツールの再検討」「CNAMEレコードの追加対応」などが挙げられますが、もう少し大枠の方向性としては以下の3点が挙げられます。
Cookie規制への対応策1| 広告以外の集客チャネルの強化
リターゲティング広告をはじめとする有料広告の効果が下がることから、SEOやSNSなど、他の集客チャネルの強化が重要となります。
Cookie規制への対応策2| 新規獲得の効率化とナーチャリングによる顧客定着率向上
広告のターゲティング精度が下がり、新規顧客の獲得が難しくなることから、新規顧客のCVR(コンバ-ジョン率)を向上させる取り組みと、ナーチャリング(見込み顧客から既存顧客への引き上げ)による顧客定着率の向上、いわゆるリピーター化の取り組みを強化する必要があります。
Cookie規制への対応策3| カスタマージャーニーを意識し、消費者から「選ばれる」仕組み作り
ターゲティング広告規制で個人に焦点をあてた広告が難しくなることから、自社のペルソナやカスタマージャーニーを改めて見直し、各マーケティングファネルに沿った情報発信により、消費者から「選ばれる」仕組み作りを行っていくことがこれまで以上に重要となります。そのためには来訪ユーザーの解像度を上げて把握し、そのニーズにきめ細かく応える必要があります。
■まとめ~トッパンのクッキーレス時代の新たな取り組み
これまでご説明した通り、今後は従来のようなサードパーティーCookieを活用したターゲティング販促広告や効果計測施策が困難になりつつあります。どうすれば使える?などと、あれこれ抜け道を考えるよりも、新たな取り組みにいち早くシフトすることが得策です。
きちんと利用承諾を得たファーストパーティーCookieをこれまで以上に活用し、さらにはWebだけではなく店頭やフィールドセールスなど、リアルなユーザー行動情報も含めて精度の高い分析を行い、購買行動に結びつく施策を考案する。
こうした活動が、これまで以上に重要となるでしょう。
その流れを踏まえ、トッパンは流通やメーカーなどに向け、クッキーレス時代の「リテールメディア」構築・運用を支援する取り組みを、2021年8月31日に発表しました。
1,600万人のユニークユーザー、国内最大級の電子チラシサービス「Shufoo!®(シュフー)」を運営するONE COMPATH、月間100億件以上の人流・購買データが蓄積されているリアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank®」を運営するunerry、豊富なデジタルマーケティング支援ノウハウを活かしたメディアの設計から運用までのサービス提供を行うトッパンの3社が協業。これにより、クッキーレスでの行動ターゲティングADや来店効果・来棚効果の計測などを融合した「リテールメディア」構築・運用を、ワンストップでより効果的に提供することが可能になりました。今後も3社共同で、リテール企業のDX推進をサポートするさまざまなサービス提供を予定しています。
これ以外にもトッパンは、ツールおよびソリューションの導入・運用代行支援を行うだけではなく、企業様のデジタルマーケティングによる成果創出を行うために目的の整理から伴走。ビジネス成果を最大化するビジネスパートナーとして、成果を一緒に創るご支援をさせていただきます。ぜひお気軽に、お声がけください。
2023.06.29